それ以上は許さない



「やっぱり私には無理です…!!」
泣きそうな声でそう嘆願する
スペルヴィアからの依頼ということで引き受けたファッションショーのモデル。正直不安しかなかったが、スペルヴィアの頼みという事もあり意を決して引き受けた…はいいのだが、直前になって場の空気に圧倒されてしまい先ほどの嘆きに至る。
「なに?ワタシのデザインした服が不満だっていうわけ?」
「そんなわけないです服は最上です!まさに馬子にも衣装!だからこそ駄目なんです!」
「似合ってるって言ってるでしょ。いい加減覚悟決めなさい」
「わかってます、わかってますけど…!」
もちろんそれはだってわかっている。だが、あの眩しいスポットライトの前に立つ事を考えるとどうしても足がすくんでしまうのだ。
「だってこんなに綺麗な服、私には似合わな…っ!」
そこまで言いかけて、は口を閉じた。スペルヴィアが唇に指を押し当てたからだ。
「あのね、ワタシは似合うと思ってこれを用意したの。そのワタシのセンスまで否定する気?」
「そ、そんなつもりは…」
「じゃあ言い訳はそれ以上聞かないわ。いい加減腹を括りなさい。背筋を正して胸を張りなさい。そうすれば、アンタはこの場で一番綺麗よ」
「っ!」
その言葉に、の身が引き締まる。そうだ、スペルヴィアは出来ると信じて選んでくれたのだ。ならきっと、いくら怖くても成し遂げられるはず。一気に表情が変わったに、スペルヴィアは優しい笑顔を向ける。
「ワタシが見込んだ女なんだから、絶対大丈夫よ」
「……はい!」
その言葉に背中を押され、は煌めく歓声の舞台へ足を踏み出した。