※メタ発言しかない。
馬と姫の物語は「Disney Princess 30cuentos para ir a dormir(眠るための30の物語)」(スペインで出版されてた派生絵本)参照。
実際の中身は歴史とか全く関係ないです。
今年のクリスマスは青の教科書と魔導書、という指定があった。
さすがに6年目ともなればネタも尽きるし、他の寮と被らないよう事前に指定もされる。
これがレオナやイデアあたりなら、自分で考える必要がないから楽だと大いに喜ぶだろう。
しかし味気ないホリデーギフトに不満を持つものも少なからず存在しており、ディアソムニア寮のメンバーもまた、その不満を共有する者の一つだった。なんたって今年は二年半続いた七章が完結した記念すべき年だ。
散々迷惑をかけたには、それこそ特大の感謝を送りたい。
しかし今年は送る日はおろか、品も、数も、すべてが学園に管理されてしまった。これでは詰みだ。
なので今年はディアソムニア寮は早々に、の二人に協力を仰ぎ、通年通りオンボロ寮と共同でギフトのアレンジを考えることになった。
「別に教科書自体は悪くないとおもうわ。直近のガチャのラギー先輩、両方水属性の魔法を使ってたでしょ? シルバーのDUOだったからすぐ枯渇したって嘆いてたわ」
「それは、すまない……」
の言葉に、自分が悪いわけでもないのにうなだれるシルバー。
ただ自分への投資ならまだしも、DUO魔法の相手への投資はほぼ関係ない……と言い切れないのがツイステの難しいところだろう。
実際DUO目当てではガチャを回しているのだ。
「でもそれならば、せめて使った教科書分くらいは送りたいものだが」
「若様の希望も通せない悪しき決まりなど、今すぐに訂正させるべきです!!」
セベクは息を巻くが、それをがやんわりと止める。
「贈り物に優劣が付かないようにする配慮なのでしょう? 謝罪からくる気持ち自体は汲みますが、抗議したところで改善は見込めないかと」
最初期は指定がなかったのだが、マレウスやカリムのような存在に自由にさせると、速攻財力のインフレを起こすのは目に見えている。
それを防ぐための上限なのだから、目をつけられている以上絶対に撤廃はしてもらえないだろう。
「まあ少なくても嬉しいよって毎年言ってくれるわけだし、一応喜んではくれると思うわ」
「どういします」
オンボロ寮の二人にそう言われてしまえばそこまでなのだが、これではさすがに気持ちが収まらない。
それに、この集まりは極論”抜け道を探すための作戦会議”なのだ。
「じゃあこっちも毎年恒例、ギフト指定の抜け道を使ったオプションといこうじゃないか」
「そうじゃの。教科書が増やせない以上、他のもので穴埋めするしかあるまい。教科書となると、本の類がいいかの?」
、リリアの年長者二人組は、すぐに代替案を挙げていく。
この辺りの規則はさすがに緩く、毎年大目に見てもらってる部分だ。やはり攻めるならここだろう。
「本をメインとするのなら、物語を送るのはどうだろう?
はこの世界に来てそれなりの時間を過ごしているが、各国の慣習や時代背景についてはまだまだ疎い。
茨の谷の訪問イベントもまだ開催されていないことだし、予習も兼ねて知ってもらうのに良い機会だと思うんだが」
「それはいいですね。七章で過去の話は知ってもらいましたが、今の茨の谷には触れませんでした。
八章開始前までに少し猶予があることですし、冬の休暇を読書で過ごして頂くのも、存外いい案かもしれません」
マレウスの提案に思いのほか色よい反応をしたのはだ。
普段の彼女ならマレウスの提案に厳しめの意見を述べるが、今回は存外乗り気らしい。
章を超えて、マレウスやに対して心境の変化があったからだろう。
「さん、前から茨の谷についてのじょうほうほしいって言ってました!」
「ええ! ずっと気にしてたし、凄くいい案だと思うわ!」
当然とも賛同する。
を一番身近で見ている者のお墨付きなら、きっと喜んでくれるに違いない。
「しかしマレウス様。恐れながら進言させて頂きますが、は異郷の身。
ツイステッドワンダーランドの歴史についても知識がままならないのが現状です。
そのようなものに茨の谷の高尚な歴史書を渡したところで、理解出来るのかは少々疑問が残ります」
セベクの危惧はもっともだ。
以前一緒に歴史の勉強をした時に、セベクはが基礎的な知識がないせいでつまずいているのを目にした。
その前例を考えると、難しい歴史書等は逆に迷惑になる可能性もある。
「確かに。自分の学力に合ってない本を読むのは苦痛になる可能性があるね。それなら、もうちょっと優しい本で手を打とうか」
「絵本とかですか?」
はの言葉にそう問いかける。
去年セベクから譲り受けた絵本は、だけでなくも一緒に楽しむことが出来た。
元居た世界とは違う物語に振れるの顔は、自分と同じくらいの年齢に戻ったかのような、無邪気な笑顔だったのをよく覚えている。
だから難しい書籍よりも教訓を含めた絵本の方が、が受け入れやすかもしれない。
「それはいいな。絵本にも教訓はたくさんある。知識を得る足掛かりとしては、いい選択だと俺も思う」
「ではさっそく学園長に一時帰省の申請をして、茨の谷の本屋に……」
皆の同意が得られたので、マレウスは早速転移魔法を発動する。しかしそれを止めたのはだ。
「待つんだマレウス。別添えのものは割とシビアだから、却下される可能性もある。もう少し作戦を練ろう」
茨の谷に戻る場合、学園長への申請は必須だ。その際に今の話を包み隠さず話した場合、ホリデーギフトの抜け道自体を却下される可能性がある。
こういったものは、極力秘密裏に行った方がいいだろう。
「しかし麓の街には、茨の谷の書籍が少ないぞ。少なくとも古書店では、絵本の類は見たことがない」
「僕も定期的に本屋には足を運んでいるが、新書でも茨の谷関連の書籍はあまり見たことがないな」
古書店に足繁く通うマレウスも、本好きとして新規開拓に余念がないセベクにそういわれてしまえば、移動せずに茨の谷の本を手に入れることは難しいだろう。
かといって、手持ちのものは今回の議題に沿わないものばかりだ。
「それなら……自分たちで作っちゃう?」
「!!」
の発言に、ハッと顔を上げる面々。ないなら作れとはよく言ったものだ。
これなら購入したものではないので資金的な面もクリアできるし、申請も必要ない。
「確かにそれが一番いいね。内容はどうしよう?」
「以前親父殿が話してくれた、馬と姫の物語はどうでしょうか?」
「それなら私も聞きました」
「僕もだ」
「僕もおじい様から聞きました」
「私はお母さんから。お兄ちゃんも一緒に聞いたわよね」
「うん。懐かしいな」
「わたしも、きいたことありますよ」
「じゃあ決まりじゃな!」
ディアソムニア寮に馴染みの深い姫の物語。
その中でも、来年の干支でもある馬が関わる物語ならも喜んでくれるだろう。
「あとは分担だけど……」
「材料は一から揃えるのでしょう? ならば、本の染色は私が。茨の谷から持ってきた染料があるので」
「では僕とリリアは本の材料を買うとしよう。その代わり、制作はたちにお願いできるか?」
「もちろん! 任せて頂戴」
最終的には本の材料をマレウスとリリアが揃え、が染色。
それをとが製本し、本文はシルバー、表紙と挿絵はセベクとが担当することになった。
材料費に関しては現時点でお咎めなしだだし、よほど高級な紙を用意しない限り文句は言われないだろう。それに最終的には渡したもん勝ちだ。
「喜んでくれくれるといいな」
「ええ」
今までの感謝と、来年への期待。それと、一緒に積み重ねてきた思い出。
その全てを手作りの本に込めて、今年のホリデーギフトはへと届けられた。