※ヒロインはとある事情により不老。
廻る事なく時を重ねた魂は、歪み崩れ、最期は跡形もなく消え去る。
それはまるで、人魚の命。
人魚姫:
人間の一生は短いが、変わりに廻る魂を持っている。
一つの人生を終えた魂は神の元へ召され、輪廻に戻りまた新たな生を授かる。
逆に人魚は永い命を持つが、その魂は廻る事が無い。
その命が終わる時、魂は海の泡となり儚く消えるのだ。
人魚姫は王子に恋をし、廻る魂を求めた。
彼女は愛する魂と共に生きる為、廻る事を止めた。
愛の為に生き、愛に魂を捧げる。
同じ心なのに、真逆の事。
どうしても理不尽だと感じてしまうのは、自分が彼女の心に感化されているからなのだろう。
人を愛する気持ちなどとっくに捨てたと思っていたが……恋情とは存外根深いもので。
の魂だけは、輪廻の軸に戻って欲しいと思うのだ。
もちろん、欲を言えばまた彼女と共に生きたい。
自身の魂も共に廻る事が出来れば、それは幸せなのだろう。
だが、罪を重ね黒く染まった魂が廻る事は出来ない。
そんな私には優しく微笑みかける。
彼女の指に、髪に、唇に。
その穏やかな心に触れる度、私の歪な魂は解けていく。
それは錯覚なのだろうけれど、彼女と共に生きたいと願う私にとっては心からの祝福。
もしこれが本当の事で、魂が浄化されているのだとしたら。
また廻る事が出来たのなら。