最高のプレゼントは愛する気持ち
「ハッピーバースデー骸!」
日付が変わると同時に、はあらかじめ準備していたクラッカーを鳴らす。
「ありがとうございます」
それに優しく答えつつ微笑む骸。
が部屋に来たのが2時間前の事。
簡易的ではあるがパーティーのセッティングが終わったのが30分前。
それから何となく落ち着かない時間を過ごし、6月9日を迎えた。
どうしても日付が変わる瞬間にお祝いをしたかったらしい。
「で、誕生日プレゼント色々考えたんだけど…結局思いつかなかったので今年は無しで」
いっそ潔いくらい迷いなく言い切った。
「………」
何とも言えない骸の表情を横目に、は続ける。
「だって毎年別の品あげるにしてももうネタ切れだし」
「………」
「でもマンネリ化するのもよろしくないし」
「………」
次第に冷えていく場の空気を読んだのか、は慌てて取り繕った。
「い、一応考えたのは考えたんだよ?」
「例えば?」
「手作りのケーキ…だけど私の実力じゃろくなの作れない」
「いいプレゼントじゃないですか」
は普段はそういった手料理をくれない。それを考えるなら非常にレアなモノだと言える。
「あとはテンプレだけど1日貴方のメイドです♪とか」
「いや、それで充分ですよむしろそれがいいです」
いつもは言えない(言ったらもれなく罵詈雑言が待ってる)ようなあーんなお願いやこーんなおねだりが出来る絶好のチャンスだ。最高のプレゼントだろう。
「でもなんか全部微妙だなって思って……」
骸の希望をさりげなく無視し、更に言葉を重ねる。
「だからプロが作った美味しいケーキと、骸が好きなメーカーのチョコ詰め合わせを用意しました!本当に色々悩んだ結果だから、手抜きじゃないからね!」
そう言っては骸の前に綺麗にラッピングされた包みを置いた。
「なるほど」
これを選ぶのだって、きっと散々悩んだのだろう。
失敗するまいと心を砕いてれたのは素直に嬉しい。
でも。
「………。非常に嬉しいですが、貴女は“貴女の貴重性”をわかってませんね?」
「貴重?誰か?」
「が、ですよ」
は自分を蔑ろにしすぎなのだ。
「僕は貴女の事を愛しています。がくれたモノなら、どんなモノだっていいんですよ」
「ゴミでも?」
「………限度はあれど、基本的には全て嬉しいです」
揚げ足を取るような回答に一瞬ひるむが、骸はすぐに切り返す。
「だって愛しい人が自分の為に時間を割いて考えてくれたんですよ?嬉しいじゃないですか」
「……そうなの?」
は未だに釈然としない様子で骸を見つめている。
だがそれと同時に何か別の気配を察知し、骸はこう言い切った。
「だから、用意してあるであろうメイド服を着て、手作りしたケーキを食べさせてくれませんか?」
「何で知ってる!!」
「貴女の事ですから。そんなに具体的に言うって事は、用意してあるのかと」
「……わかったよ。悲惨な見た目で残念な味でも文句言わないでね」
照れ隠しなのか投げやりな様子で用意を始めるに苦笑がもれる。
「クフフ、大丈夫ですよ」
だって、から貰えるプレゼントなら何だって最高の品なのだから。