通り雨の路地にて
今日は午後から雨が降るという予報だったから骸には傘を持つように伝えて、でも自分はまだ大丈夫だろうとたかを括って買い物に出た。だがその根拠のない自信はあっさり打ち砕かれ、空は土砂降りの雨を降らせている。
「やっぱりだめだったか」
幸い家はすぐ近くだから、雨が降っても走って帰ればいいだろうと思っていたのだけれど。
「………」
買い物袋に入っているものを思い出し踏みとどまる。さすがにこれを走って持ち帰るのは宜しくない。仕方ないから併設されているカフェでお茶でもして時間を潰そうか…なんて考えていると。
「」
「……骸?なんでここに」
「今日は早く上がれたので。は今から買い物ですか?」
「ううん帰るとこ。でも傘無いから雨宿り中」
「貴女今朝僕に傘を持って行くよう言ったじゃないですか。なのに自分のは忘れたと」
「ギリギリいけるかなと思って」
「仕方ないですね。ほら、荷物貸してください」
骸はの荷物を持つと、傘に招き入れる。
「こっちは自分で持つから大丈夫」
「?」
「平らに持ってないと駄目だから」
「ちなみに中身を聞いても?」
「骸がこの前美味しいって言ってたチョコケーキ」
「なるほど。じゃあこれ以上は怒れませんね」
ゆっくりと歩幅を合わせて路地を歩く。傘は一人用だから、二人で入るには少々狭いけれど。
「なんかたまにはいいね、こういうのも」
「そうですね」
だって雨音を背景に語らう時は、いつもより近くにいる事が出来るから。