似た者同士、好き同士
どうしようもなく眠くて、とりあえず仮眠しようと休憩用のソファに横たわる。どうせこの部屋は守護者級の幹部くらいしか入れないわけだから、誰か来たって困らない。それより本当に眠くて正直周囲への気遣いとか何も考えられない。ともかく寝たい。
そんなぐだぐだとした思考のままが寝入ったのがだいたい20分くらい前のこと。いい具合に仮眠を取れたお陰か寝起きは良好で、スッキリとした思考で起き上がる。すると、肩から何かがずり落ちた。
「?」
寝る前は余裕なんて全然無かったから、とりあえず着の身着のまま横になったはず。ずり落ちたそれを持ち上げてみると、それは見慣れた彼の人の上着だった。どうやら寝てる最中に掛けてくれたらしい。は残りの仕事を手早く終わらせると、服を返しにいくため部屋を出る。すると程なくして廊下の反対側から綱吉が歩いてきた。
「あれ、その服どうしたの?」
ツナの視線は先ほどの上着に注がれている。
「これ?さっき骸が貸してくれたみたいなんだよね」
「みたいって?」
「寝てたら掛けてくれてたっぽくて。だから今から返しに行くところ」
「なるほど。理由はわかったけどなんでわざわざ羽織ってるんだ…?」
「それはね~」
「、お目覚めですか」
後ろからやってきた骸がに声を掛ける。は骸に駆け寄ると、パタパタと手を挙げて上着をアピールした。
「さっきこれ貸してくれたの骸だよね?ありがとう」
「礼には及びませんよ。100%の返し方してくれましたし」
「なにそれ」
は怪訝そうな顔をするが、骸はそれ以上語る気は無いようで微笑んだまま無言を貫く。
「………」
その様子を見た綱吉は全てを察したようで、苦虫を噛み潰したような顔を骸に向けていた。
「おや沢田綱吉、何か問題でも?」
「な、なんでもない…。とりあえずオレはもう行くから」
「?」
状況をつかめていないは更に疑問符を浮かべるが、綱吉は答えず急ぎ足でその場を去ってしまった。なんであんなに逃げるみたいに。
「骸もしかしてツナのこと脅した?」
「失礼な。何もしてませんよ」
「ふーん?」
「羨ましかったんじゃないですかね?」
「どの辺りが?」
「内緒です」
またもや質問には答えられず、モヤモヤした気持ちは晴れない。だが追求するとそれはそれで面倒そうなので、はあえて口を噤んだ。
一方二人と別れた綱吉は、離れたところでようやく一息ついた。察して逃げたはいいが正直超直感があるのも考えものだと思う。だってなんで声掛けただけであんなラブラブっぷりを見せつけられねばならないのだ。
「はぁ、骸めんどくさ……」
わざわざ起こさず服を掛ける気遣いをみせ、返しに来させる。しかもそれを見せびらかすような方法で。まぁ見せびらかす点に関しては偶然にもが羽織るという形をとっていたからだから、骸が意図したわけではないのだろうが。
「だとするとも確信犯…?」
結果的にそうなったとはいえ職場恋愛を堂々としてるような二人なのだ。その可能性はあり得る。
「………」
なんとも言えない気持ちになり、綱吉は深い深いため息をついた。