お誘いは下心あり?
今日は待ちに待った日曜日、とバトル出来る日だ。え?本来は逆だって?細かいことは気にすんな。
電話はさっきかかってきたから、後はこの場で待っていればは来る。バトルはもちろん楽しみだけど…今日はもっと楽しみなことがあるせいで、顔が緩んで仕方ない。
ん?なんだ、気になるのか?ふふん、今日は機嫌がいいからな。教えてやってもいいぜ。
実はな……オレはを食事に誘おうと思ってるんだ。場所は最近ヤマブキに出来た有名な店。この前ラジオでも特集されてたから、もしかしたらも知ってるかもしれない。
ちゃんと予約もした。服にも気をつかった。姉ちゃんからお墨付きももらった。何もかも完璧だ。
後は上手く誘えさえすれば、は落ちる!
「ごめんグリーン!遅くなっちゃった」
「大丈夫だぜ。オレも今来たところだし」
走って来たであろうに、にっこりと笑いかける。本当は誘われることを前提にスタンバイして、1時間前からここに居たとは口が裂けても言えない。
「早速だけど、バトルしよう!絶対負けないよ!」
「今日こそお前を負かしてやるぜ!」
普段は負けてばかりだが、今日ばっかりはに勝っていいとこ見せる。これがオレの理想シナリオだ。
で、結果は。
「勝ったー!やったね!」
パートナーのポケモンに抱きつく。何だよあいつ、オレだってまだあんな風にされたことないのに。嬉しそうに抱きつかれるなんて羨ましい……じゃなかった。オレは頭を第2の理想シナリオに切り替える。
第1の理想シナリオ"カッコよく勝って、華麗に誘う"は失敗になったが、ちゃーんと他の手だって考えてあるんだぜ。大丈夫、上手く誘えばいいんだ。
「さすがはつえーな。オレももっと鍛えないと」
「ううん、グリーンだって強いよ。さっきのバトルだって、最後までどうなるかわからなかったし」
「お前の頑張りがオレのに優ったってことだろ?自信持って、勝ったって言えよ」
「そっか。せっかくみんなが頑張ってくれたんだもんね。ありがとう!」
の言葉に応えるようにホルダーについているボールが揺れた。ポケモンたちも、みんなが大好きなんだな。まぁオレも負けてないけどな!
ここまでは第2の理想シナリオ通り。あとは
「なぁ。もしこの後暇だったら、一緒に食事なんてどうだ?」
「わぁ嬉しい!さすがグリーンは気が利いてるね!」
「当たり前だろ。せっかくを独り占めに出来てるんだ、今日は帰さないぜ…」
「えっ…!」
を上手くこなせばいいだけだ。第2の理想シナリオに抜かりは無い。
よし、やってやる!
「えーと…なぁ。この後暇か?」
できるだけさりげない感じに問いかける。大丈夫、不自然じゃないはずだ。
「え?一応暇だけど」
「何だったら、この後一緒に食事に行かないか?」
この後はが喜んで、オレがカッコよくキメて……
「食事かー…嬉しいんだけど、一週間もこんなに豪勢に食べたらブニャットみたいになりそうだからな…」
よし、ここで決め台詞を…ん?
「今日は止めとこうかな…」
「えっ?」
「だってこれ以上太ったら、この子たちに『なみのり』や『そらをとぶ』をしてもらうのも気が引けるし…」
パートナーであるポケモン達を気遣うはまさにトレーナーの鏡だ。じゃなくて!
「お前……そんなに外食とかしてたのか?」
「うん。月曜日はアンズとハヤトと一緒にランチ食べて、火曜日はマツバにディナーに誘われたよ。水曜日はシジマさんの家でお相伴させてもらったし、木曜日はツクシくんと自然公園弁当食べたんだ。金曜日はイブキとワタルに老舗の料亭に連れてってもらって、昨日はタケシが手作りのご飯を振る舞ってくれて…こんなに食べてたら太っちゃうでしょ?」
は指折り数えながら一気に今までの食生活を語った。
「………」
ちょっと待て。オレ以外にもこんなにを狙ってるやつ(シジマはともかく)がいるのか?!ラ、ライバルが多すぎる……
結局、この後オレはを家に呼んで、姉ちゃんに低カロリーの料理を作ってもらった。
かなり不本意だけど…まぁいいか。姉ちゃんを手伝うのエプロン姿も見れたし。
でも次は絶対に成功させてやるからな!