その温もりは
「ゲンの手って冷たい」
唐突に手を掴んできた。
「いきなりどうしたんだい?」
とくに振り解く理由も無いので、にされるがままになる。
自分よりも一回り小さい手は、無骨な己のものとは違い白く華奢だ。
「いや、ゲンの手って冷たそうだな…って思って」
やっぱり冷たかった。そう言って笑うはまるで日だまりのよう。
「の手は温かいね」
繋いでいるこちらがじんわりと温かくなる。それは、己の冷たさでその温もりを奪っているということでもあるけど。
「自家発電出来るからね!」
ゲンの言葉に、は自信満々に答える。
「………発電?」
しばしの空白の後、ぽそりと質問を投げかける。
「あっ!違う違う!自家発熱!!」
慌てて訂正する。
「私は機械じゃない!」
別に電気タイプのポケモンは大概自家発電出来るだろうし、発電イコール機械というわけではないのだが。
「そうだね、機械は温かくない」
その様子が可愛いので、素直に肯定しておく。
「なんにせよ、温かいのはいいことだよ」
自分のように冷たかったら、他人の熱を奪ってしまうから。
「でもね、手が冷たい人って心が温かいんだって。逆もあるけど」
「?」
「ゲンは優しいから。その話、あながち嘘じゃないかも。あ、だったら私は冷たい人間になっちゃうか」
苦笑しつつも、は朗らかに笑う。
繋いだままの手は、いつの間にか温度が同じになっていた。
共有する温もりにつられ、心の中にもじんわりと熱が広がっていく。
「いいや、私は嘘だと思うよ」
「なんで?」
だっては手も心も温かい。私の冷たい心に、ような優しい温もりを与えてくれる。
「は優しいよ。手も、心もね」
飾り付けた言葉ではなく、ありのままの気持ちを告げる。
「……そっか。ありがと」
少し恥ずかしそうなに、ゲンは優しい微笑みを向けた。