過保護じゃなくて、好きだからこそ
「ちょっと何ですかその格好…?!」
いつにも増して重装備なダイゴには絶句する。
珍しい石が見つかると聞けばスーツのままで探しに行くような人間が、こんなにもしっかりと装備をしているなんて。嫌な予感しかしない。
「何って…見ればわかるよね?」
何でそんなことを聞くのだと言いたげな表情。は眉間の皺をさらに深めた。
「それはわかります!」
この人がやることといったら石探しだけ。そんなこと言われなくてもわかる。
「そうじゃなくて!何でそんなに重装備なのかって聞いてるんですよ!!」
なんせ相手は石の事となれば全て(もちろん私の事も)投げ出していく筋金入りの石オタクだ。このまま放っておけば後々大変なことになるかも知れない。それは絶対に阻止しなければ。
「滝をのぼるためだよ」
「……はい?」
一瞬ダイゴに言われた言葉の意味がわからなくなった。
たきのぼり?貴方ひでんわざなんて使えたんですか?、と喉元まで出かかった言葉を必死に食い止める。
「石を探そうと思っているエリアには大きな滝があってね…それをのぼるから重装備なんだよ」
そう笑顔で言われ、は脱力する。心配して損した。
「……だったら『そらをとぶ』使っていけばいいじゃないですか…」
「それも考えたんだけど、意外に滝の中にも石の採掘スポットってあるから侮れなくてね。だから滝をのぼって言った方がいいんだ」
「じゃあせめて『たきのぼり』でポケモンにサポートしてもらえばいいのに」
「あぁ!」
ポンっと手を叩き、その手があったという顔をするダイゴ。その様子にはさらに力が抜けた。本当にこの人はあの超有名会社・デボンコーポレーションの御曹司、なおかつホウエンリーグチャンピオンという華々しい実績を持った人間なのだろうか。むしろ詐欺なんじゃないだろうか。周りが見えていなさすぎる。
「…もういいです。私のマリルリに手伝ってもらってください」
はホルダーからボールを外し、マリルリを出す。
「マリルリ、お願いね」
「リール!」
ボールの中で先程までの話を聞いていたようで、マリルリはびしっと敬礼をしてに応えた。
「『たきのぼり』が使えるポケモンならボクだって「駄目です!」
ダイゴはの剣幕に押されて口をつぐむ。
「ダイゴさんのポケモンだったら最終的にダイゴさんの言うこと聞いて危ないことでもなんでもさせちゃいそうなので駄目です!」
「………」
複雑な顔をするダイゴ。確かに当たってはいるが、これではまるで心配性の母親のようだ。との苦情が伝わってくる。
「マリルリには危ないことしそうになったら攻撃してでも止めるように言っておきます」
「マァリ!」
長い耳をピコピコと動かして、やる気満々のマリルリ。
『危険を犯せば容赦なく『ハイドロポンプ』をお見舞いしてやるぜ!』
と言いたげである。そんなことをされたら余計に大怪我しそうだが…その可能性には気づいていない。
「頑張ってダイゴさんをサポートしてね!」
「リルリー!」
楽しそうに笑いながらマリルリを抱きしめるに、思わず苦笑を漏らす。
「…まぁ仕方ないか」
ちょっといきすぎだが、それは自分の事を本当に心配してくれているから。
そう結論付け、ダイゴはよろしくの意味を込めてマリルリのふかふかした頭を撫でた。