「あの時、ディアルガは私がその人に似てるって言ったでしょ?だから、ある前提の下で私なりに考えてみたんだ」
「それがその男を連れて来た理由か?」
「そう」
ディアルガを真っ直ぐに見据える
強い意志を湛えた、あの娘と同じ瞳。 それは引き込まれそうなほどに美しい命の光。
「私がディアルガの言う『娘』の生まれ変わり、もしくは血縁だとしたら。きっと、心から惹かれる人がその想い人なんじゃないかって」
たった一人でこんな場所まで来る程、その人は彼を愛していた。それなら。
心から愛したいと想った相手が、きっと彼と同じ魂を持つ人間。
「ゲンが実はその想い人の生まれ変わり…って事はない?」
「!」
それまで黙って話を聞いていたゲンの目が見開かれる。
「だからは私を連れてきた来たのか…」
どうしてもゲンに来て欲しかった理由。はディアルガの言う『あの娘』の願いを叶えてやりたかったのだろう。
「うん、黙っててごめんなさい。でも予備知識の無い状態で来てもらった方がいいと思って。……ねぇ、ディアルガ。彼の魂の色は、ゲンと同じ?」
「………」
の姿が娘と重なる。時を戻す願いを告げたあの時と同じだ。
「………さぁな。その男に会っていればこの者がそうだと確かめる術があったのかもしれないが…生憎、私は彼の者に会った事が無い」
「……そっか」
確かめられたら、いいんだけどな。ぽそりと呟き、はゲンと向き合う。
「でもね、何となくゲンじゃないかって思うんだ。心の根幹が、惹かれてるような気がする…なんてね」
そう言っては無邪気に笑った。





とゲンが下山した後、ディアルガはまた時空の狭間へと戻った。
「お前もお人好しだな」
どこからか響く声。どうやらパルキアも先程までのやりとりを見ていたらしい。
ここは時空世界。唯一お互いが干渉する事無く共に漂える世界だ。
「別にいいだろう。只の気紛れだ」
パルキアの指摘は最もである。ただの人間相手に喋りすぎた。随分とお人好しになってしまったと思う。
「それよりお前はどう思う?」
「あの2人の事か?」
「あぁ」
結ばれなかった2人。世界を変える為に此処まで来た強い意志。その根底にある確かな恋情。もしかしたら、あの娘の片想いだったのかもしれない。だけど、それでも次の生では結ばれて欲しいと思ったのはーーあの娘の、心からの微笑みが見たかったからなのかもしれない。
「そうだな……あの娘の魂も、世界を救った英雄の魂も、もうこの空間には居ない。また新たな生を受けたのだろう」
「では」
「もしかしたら、あのが『そう』なのかもな」
「……そうか」
あぁ、が此処へ来たのは。
気紛れに呼び掛けに応えようと思ったのは。

『ねぇ、ディアルガ。私は、変わらずに在れた?』

2014.04.18 掲載
2021.05.19 加筆修正