大切なものは…
河原で拾ったまんまるの小石、見たことのない鳥の綺麗な羽、遠くの国から流れてきたと思しき虹色に光る硝子の欠片。どれもこれも、大切な宝物。だから無くさないように宝箱にしまう。
そんな中でも、今一番に大切なのは。甘くていい香りがするし、笑うとすごく可愛い。厳しいところもあるけどそれ以上に優しいし、なにより一緒に居てくれる。一番大切な、宝物みたいな人。
だからたまに、ほかの宝物と一緒にしまっておければいいのに、と思う。そうしたらずっと一緒だし、居なくなってしまうかもという不安もなくなる。僕は弱いけれど宝箱の中なら守ってあげられるし、良い事づくめだ。
でもは宝箱に入れておけるほど小さくはないし、入れておく必要がないとも言う。(実際前にその話をしたら引きつった顔をされた)でも大切だと思うほどに、不安は募るばかりで。どうしたらいいのだろう。
「ねぇ、もし宝箱に入りきれないくらいの大きな宝物があるとしたら、どうしたらいいと思う~?」
「………」
は僕が考えていることを察知したのか、あからさまに嫌そうな顔をする。
「ち、違うよ~!を入れるんじゃなくて、これ!宝物が増えてきたから、もしいっぱいになったらどうしようかなって思って~」
僕は慌てて宝箱を開けて中身を見せる。実際、箱はもう少しで満杯になりそうだった。
「でしたら、更に大きい箱を使えばいいのでは?」
「う~ん、でもずっとそれを繰り返していくのも大変だし…」
「では始めから大きなものを用意するのはどうです。大は小を兼ねると言いますし」
「あんまり大きいと持ち運びが大変だよ~」
「それなら本当に必要なもの以外捨てましょう」
「それは絶対駄目!どれも大事なものだもん、捨てるなんて出来ないよ~!」
「我が儘ですね…」
はお手上げといったように手を挙げる。彼女の主張は最もだし、どれもちゃんと理にかなった意見だと思う。でも僕が求めているのはそういう答えじゃない。
「そこまで言うなら、いっそ諦めて手持ちするほかありませんね。それ以外どうしようもないです」
まぁどうせ貴方の事ですからそんなことしたらフラフラして怪我しますよ。
なんて、余計な一言まで付いてくるのが実にらしい。だけど僕はそんなことより、に言われたこの言葉の方に気を取られていた。
「手持ち…」
「?」
自分の手で持つ。入れておけないのならば、この手で持てばいい。そうだ!
「こうすればいいんだ~!」
僕は勢いよく立ち上がると、目の前にいたを抱きしめた。
「?!」
突然のことに驚きは目を白黒させている。そんなの様子とはお構いなしに、僕はそのまま彼女を運んで歩き出す。
「なっ何するんですか…!」
「とずっと一緒に居る方法!こうやって抱きしめてればいいんだ~!」
「やっぱりそのこと考えてたんですか!というかまだ諦めてなかったんですか!離してください迷惑です!」
「絶対離さない~!」
そう、絶対に離さない。だっては宝物みたいな人だから。離れようと躍起になるも可愛い、って言ったらまた怒られちゃうかな。でもそうだとしても、この気持ちは止められないから。
だからお願い。これからも、ずっとずっと一緒に居てね。