幸せはふたつぶん



※ローソンコラボネタ


「買い食いするなんて珍しいですね」
「うん?」
温かそうな湯気を立てて袋から顔を覗かせたのは肉や具材が入ったおかず系の中華まんだ。確か以前ここにきた時は何も食べずにいたから、てっきりそういうのをしないタイプだと思っていたのだが。もしかして、お腹が減っていたのだろうか。
「前に君が食べているのを見てから、ずっと食べてみたいと思ってたんだ」
「それならそう言ってくだされば、その時差し上げたのに」
「だって言う前に君が全部食べてしまったからね」
「私はそんなに早食いではありません」
まるで人を食いしん坊だとでも言う言葉に、は不満そうな顔をする。するとエルキドゥは困ったように笑ってこう返した。
「違うよ。あまりに美味しそうに食べてたから、見惚れて声をかけるのを忘れてしまったんだ」
「っ!そ、そう、ですか」
貶されたのかと思ったら急に持ち上げる。なんだか恥ずかしくなって、は持っていた中華まんに噛り付いた。ちなみに今回は別の種類にチャレンジしようと思ったので、中にはゴマ風味のこし餡が入っている。
甘い。美味しい。そして熱い。でも正直自分の頬の方が熱いしこの流れだとまた食べている様子を観察されてしまうに違いない。だってこの人はそういう心の機微とか、それこそ羞恥とかに疎いから。
そうだ、ならば今回は先回りしてしまおう。そう結論づけは食べかけのそれを半分に割った。
「それなら、これは初めから差し上げます」
歯型のついていない方を差し出すと、エルキドゥは同じように自身の持っていた中華まんを半分に割る。
「ならこれも半分にしようか。はい」
「ありがとうございます」
拒否する理由もないので素直に受け取り一口食べる。うん、これもやはり美味しい。だけど。
「なんだか前より美味しい気がします」
「メーカーの企業努力の賜物かな?」
「それももちろんあるでしょうが、これは別の理由でしょう」
「?」
どうせわからないだろうから教えてはあげないけれど。
多分きっと、この人と一緒に食べているから美味しいのだろう。人は幸せを分け合って生きる生き物らしいから。
だから、貴方の隣で食べるとこんなにも美味しく感じるのだ。