お菓子も悪戯も、どちらもどうぞ
南瓜のランタン。魔女の帽子。そしてお菓子いっぱいの籠を片手に、はショルメの家の扉を叩く。
「トリックオアトリート!」
開口一番告げたのは、今日この世界で一番たくさん言われているであろう定型文。
ショルメの事だからお菓子を用意してるかしら?それとも参加しない姿勢を貫いて何もなし?だったらどんな悪戯をしよう?そんな事を頭に浮かべていると、その思考は衝撃とともに吹き飛んだ。
「普段子供扱いするなという割には、随分と子供らしいじゃないか。そんな君にはこれがお似合いだ」
衝撃の正体はショルメの指で、つまり私はショルメにデコピンされたという事で、でも何故私がデコピンされなければならないのか、それはどちらかというと悪戯に属するからむしろ私がショルメにするべきではないのか、等々。言いたい文句はぐるぐると頭をめぐるが、不意を突かれたの口からは何も言葉が出てこない。
「要件は終わったかな?では私は仕事があるからこれで失礼するよ」
そのままショルメは扉を閉めてしまい、そこには困惑した表情ののみが取り残された。
「ちょっと待ちなさい!!」
少しして、やっと現実を受け入れた私はもう有無を言わさず悪戯してやる!とドアノブを勢いよく掴む。すると、目の前に何かがポロリと落ちてきた。
「これ…飴玉?」
ハロウィンらしいオレンジと黒のラッピングに包まれた飴は、つい先程までは無かったもの。
つまり。
「っ!」
お菓子も悪戯も、どうやらショルメの方が上手だったらしい。