貴方の隣は暖かい
今日は久しぶりに二人とも休みで、特にずっと休日返上で仕事をしていたイッキさんにとっては本当に久々のオフで。せっかくの休みだからとイッキさんはデートに行こうと誘ってくれたけれど、私はイッキさんに休んで欲しくて。
だから今日は家で映画でも観ませんかと提案してみたのだ。それじゃいつもと変わらないと言われたけど(実際同棲しているのだしイッキさんの言葉はごもっともだ)、初心に帰って家デートだとなんとか言いくるめたのでイッキさんもそれを了承してくれた。
少し遅めに起きて、軽く朝食を食べて片付けを済ませる。映画は昨日借りてきたし、映画鑑賞のお供にクッキーも買ってあるから準備は万全だ。紅茶を淹れてリビングへと戻ると…そこには穏やかな寝息をたてて、ベッドに寄りかかるイッキさんの姿があった。起こさないように毛布をかけると、私はイッキさんの隣に座る。
「やっぱり疲れてたんですね」
私に合わせて起きてはくれたけれど、ご飯の最中はずっと上の空だったしまず起きるのもだいぶ苦労していた。それ以前に、ここ最近はずっと仕事にかかりきりで家には寝に帰る状態だったのだ。やはり家でのんびりすることにして正解だった。
「………」
瞳を閉じているイッキさんの表情は綺麗なのはもちろんだが、なんだか少しだけ幼くも見える気がする。起きているときはかっこよさが勝って気付けなかった部分が見えてくるように思えて、なんとなくくすぐったい気分になった。
「……イッキさん、好きです」
普段だったら恥ずかしくて言えないことも、眠っている今なら素直に言える。
「イッキさんの隣は、ドキドキするのはもちろんだけど…今はそれ以上に落ち着くんです」
ふわりと漂ってくるのはイッキさんの匂い。イッキさんが私の香りを好きだと言ってくれたように、私もイッキさんの香りが好きだ。初めは惑わされるばかりだったけど、今は優しく包んでくれる、そんな香り。
「隣に居ることが出来てすごく幸せです。イッキさんに好きになってもらって、こうやって一緒に過ごして、本当に幸せなんです。奇跡みたい」
イッキさんの隣は温かくて、こちらまで眠くなってしまう。ならいっそ、このまま二度寝してしまってもいいかもしれない。
起きたら紅茶を淹れ直して、一緒に映画を見よう。これは確か続きもので、今度新作が上映されるはずだから次はそれを映画館でみようなんて話しながら。
この先も続く幸せに思いを馳せながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。